セレモニースタッフ 厚ヶ瀬 智哉

「ありがとう」は魔法の言葉!

子どもの頃の僕の夢は、美容師になる事でした。 楽しく交わす会話、変わっていく自分。 笑顔や真剣な眼差しを織り交ぜながら違う自分を引出してくれる様は、まるで「魔法使い」の様に感じ憧れていたのでしょう。やがて幼い日の想いも遥か、迎えた就職の季節。 社会へと足を踏み入れる初めての一歩。 僕が選んだのは、自衛隊でした。大学で目にした求人に何気なく応募したのがきっかけでした。 流されるままに入隊した自衛隊。 三ケ月の間に配属先を希望できるとの事でした。 様々な部隊へ赴き取組や役割を耳にする中で僕の心を捉えたのは、衛生班の先輩の言葉でした。 災害時に被災地の人々を救護する一見、自衛隊らしくない部隊でした。 そこで耳にした先輩の言葉が僕の心に残りました。 「一時的に救護は出来てもその後のことが気にかかる」。「戦う」から「救う」へ気持ちが動き入隊時の靄が晴れ配属希望。しかし配属は叶わず平和のためにと銃剣を持ち、姿の見えぬ敵に向き合う訓練に次第に心がしぼんでいく様でした。任期を終えて新たな道を探す中、僕の興味を引いたのは、「葬儀」の二文字。 瞬間に思い浮かんだのは、祖父の葬儀の事でした。穏やかな雰囲気を纏い戸惑う父や母を支え笑顔を誘う担当者に好印象を持っていました。他人を笑顔にする仕事では?との想いと共に幼い日に笑顔を引出してくれた美容師と重なりました。しかし入社をしてみると毎日、葬儀の準備に清掃、寝台車の補助等の裏方のお仕事。ご遺族様の前に立ち寄添い励まし支える先輩たちの姿に次第に「僕もいつか・・・」との思いが芽生えてきました。 想いを胸に抱え過ごすある日、衛生班の先輩の言葉が蘇ってきました。 「その後」の先は、病院や退院して日常に帰る姿を想像していましたが、目の前に居るご遺族様の姿にも「その後」があるのではと感じ驚きました。衛生班の先輩が心を残しながらも最後まで救う事の出来なかった場所へ僕は来ていると感じたのもこの時だったように思います。僕は今、お柩を囲み安らかに眠る大切な方のお顔に生前の面影をうつし寄添うご遺族様の傍に居ます。 後悔や労いの言葉を小さく時に大きく告げる人。只、無言で見つめる人も・・・。別れの時を告げる僕は、大きな罪悪感と闘いながら出逢えた事、共に歩めた事への感謝の想いを故人様へ・・と魔法の言葉を促すのです。

大きな声で「ありがとう」。